臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
依頼総説
腸内環境と多発性硬化症
三宅 幸子能登 大介
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 61 巻 9 号 p. 583-587

詳細
抄録

腸内環境は様々な疾患との関連が注目されている.多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MSと略記)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎では,無菌飼育下で病態が軽減し,抗生剤投与により腸内細菌を変化させると病態が影響を受ける.Th17細胞を誘導するセグメント細菌は病態を悪化させる一方,制御性T細胞の増殖に関与するBacteroidesは多糖類を介し,Clostridiumは短鎖脂肪酸(short chain fatty acid,以下SCFAと略記)を介して病態を抑制することがわかってきた.MSの腸内細菌叢解析も行われ,SCFA産生菌の減少などが報告されている.SCFAを含む腸内細菌代謝物は,免疫細胞のみならずグリア細胞にも影響を与え,病態形成に関与している可能性がある.

著者関連情報
© 2021 日本神経学会
次の記事
feedback
Top