臨床神経学
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依頼総説
腸内環境と多発性硬化症
三宅 幸子能登 大介
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2021 年 61 巻 9 号 p. 583-587

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要旨

腸内環境は様々な疾患との関連が注目されている.多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MSと略記)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎では,無菌飼育下で病態が軽減し,抗生剤投与により腸内細菌を変化させると病態が影響を受ける.Th17細胞を誘導するセグメント細菌は病態を悪化させる一方,制御性T細胞の増殖に関与するBacteroidesは多糖類を介し,Clostridiumは短鎖脂肪酸(short chain fatty acid,以下SCFAと略記)を介して病態を抑制することがわかってきた.MSの腸内細菌叢解析も行われ,SCFA産生菌の減少などが報告されている.SCFAを含む腸内細菌代謝物は,免疫細胞のみならずグリア細胞にも影響を与え,病態形成に関与している可能性がある.

Abstract

Multiple sclerosis (MS) is an inflammatory demyelinating disease of the central nervous system (CNS) and T cell-mediated autoimmune processes are assumed to be involved in its pathogenesis. Recently, accumulating evidence has indicated that commensal bacteria interact with the host immune system and that the alteration of commensal bacteria composition, termed dysbiosis, is associated with various autoimmune diseases including CNS autoimmune diseases. The effect of gut microbiota on disease has been initially shown in experimental autoimmune encephalomyelitis (EAE), animal model of MS. Recent analysis of microbiota revealed dysbiosis in patients with MS including the reduction of short chain fatty acid (SCFA). Administration of SCFA ameliorates disease severity of EAE in association with the induction of regulatory T cells. Moreover metabolites of microbiota such as SCFA and tryptophan have been shown to influence glial functions in CNS. In this review, we introduce recent findings regarding the interaction between gut microbiota and MS both in EAE and MS.

はじめに

腸管は食物の消化吸収のみならず,最大の免疫組織として機能している.腸管の表面積はテニスコートの約1.5倍にものぼり,生体の半数以上のリンパ球が存在する.獲得免疫は,顎の発達とともに進化したと言われるほど,腸管は免疫と関連が深い.腸管は常に食物の摂取などを通して外来抗原に接し,100兆個にも達する腸内細菌と共存するなど免疫器官として独特な環境にある.近年,腸管に存在する様々な免疫細胞の研究が発展するとともに,シークエンスによる腸内細菌叢の網羅的遺伝子解析がすすみ,常在細菌による免疫反応の調節に関心が高まっている.本稿では腸内細菌と免疫反応について,さらに神経免疫疾患の代表的な疾患の一つである多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MSと略記)とその動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis,以下EAEと略記)との関連について,最近の知見を交えて紹介する.

1. 多発性硬化症

MSは代表的な炎症性脱髄疾患であり,中枢神経系にリンパ球浸潤,抗体沈着,補体活性化などを伴う脱髄巣が多発し,多様な神経症状を呈する1.脱髄巣が中枢神経系の様々な場所に出現し再発と寛解を繰り返す,時間的,空間的多発性を特徴とする.大部分のMS患者は再発と寛解を繰り返す再発寛解型MS(relapsing-remitting MS,以下RRMSと略記)の経過をたどるが,そのうち一部の患者がはっきりとした再発がなく症状が徐々に進行する二次性進行型MS(secondary progressive MS,以下SPMSと略記)へと移行する.また,病初期よりはっきりとした再発のエピソードがなくゆっくりと症状が進行する病型は一次性進行型MS(primary progressive MS,以下PPMSと略記)に分類されるが,本邦では少ないとされている.これらの進行性MSの患者では,RRMSに奏効する病態修飾薬が無効であることが多く,RRMSとは異なる病態により神経変性が進行すると考えられている.MSの平均発症年齢は30歳前後であり,女性に多く,男女比は1:2~3程度である.MSの根本的な原因は未だ不明であるが,様々な遺伝因子および環境要因が関与する多因子疾患と考えられている.MSの有病率には人種差があり,欧米白人においては10万人あたり100人以上の地域があるのに対し,我が国の有病率は人口10万人当たり10人程度と推定されており,遺伝的要因の関与が示唆される.MSにおけるgenome-wide association study(GWAS)の結果から,以前より疾患感受性遺伝子として知られていたHLA-DRB1*1501の他に,HLAクラスI分子,interleukin-7 receptor α(IL7RA),interleukin-2 receptor α(IL2RA),C-type lectin-domain family 16 member A(CLEC16A),CD58,tumor-necrosis-factor receptor superfamily member 1A(TNFRSF1A),interferon regulatory factor 8(IRF8),CD6などが指摘された.さらに2011年に約1万人のMS患者を対象としたGWASの結果が報告され,上記の遺伝子に加え,新たに29の新規感受性遺伝子が明らかとなったが,その多くが,CD4陽性ヘルパーT細胞の分化や活性化,増殖に関与する分子であり,他の自己免疫疾患の疾患感受性遺伝子と共通するものが含まれていた.この結果から,MSの病態形成において,T細胞を中心とする自己免疫機序が強く関与していることが裏付けられた.また,MS発症に関与する環境要因も様々な因子が報告されている.MSは高緯度地域において有病率が高いことが知られており,ビタミンDの低値や日照時間がリスク因子として報告されている.また,ウイルス感染との関連も指摘されており,特にEBウイルスの既感染率や,抗体価がMS患者では健常者と比較して有意に高いことが明らかとなっている.また,喫煙がMSの発症リスクとなることが報告されている2.前述のとおり,MSの罹患率は欧米で高く,日本では少ないと言われていたが,1980年代から年々増加している.MSは,他の自己免疫疾患と同様に多因子疾患であり,遺伝的要因,環境的要因がともに関与するが,近年の急速な増加は環境要因の変化によるところが大きいと考えられる.近年では環境因子の一つとして,免疫応答に重要である腸内環境が関連していることも注目されている.

2. 腸内細菌叢による免疫調節

成人の消化管には,500種100兆個以上とも推定される細菌が生態系を形成し,消化管における感染防御,消化管機能の調節,食事性非消化炭水化物の分解や代謝,ビタミン類の産生及び腸管上皮に必要な栄養素の供給など生体に極めて重要な役割を担っている.また腸内細菌叢は,摂取食物,食物に含まれる細菌,薬物,気象,ストレス,年齢など様々な外的,内的要因の影響を受け変化している.免疫応答は,腸内細菌叢と密接に関わる生体システムである.無菌下で飼育したマウスでは,CD4陽性細胞の減少,IgA産生形質細胞の減少,Pyer’s patchのサイズ縮小,孤立性リンパ濾胞などの3次リンパ組織の欠損など免疫組織の発達が悪いなどの報告がある.腸内細菌は免疫祖組織の発達に重要なばかりでなく,代謝産物などを介して免疫応答の調節に関与している.一方,免疫細胞は分泌型IgAやサイトカインなどを分泌し,腸上皮のバリア機能や腸内細菌叢の調節にも関与する.腸内細菌叢の乱れによって,免疫反応は調整され,腸炎のみならず全身の免疫疾患やアレルギーなどにも関与する.

近年先進諸国ではアレルギー疾患の増加が問題となっているが,生後2歳までの間に抗生剤の投与を受けると,アレルギーになるリスクが高くなるという報告や,出産前の妊婦にプロバイオテイックスとして乳酸菌(Lactobacillus GG)を投与すると,出生児のアトピー性皮膚炎が減少することが報告され,腸内細菌叢との関連が示唆されている.近年,自己免疫疾患モデルの発症にIL-17を産生するTh17細胞が重要であることが注目されているが,IL-17産生細胞は腸管に多く分布する.腸管に存在するIL-17産生細胞は,CD4+ヘルパーT細胞に属するTh17細胞の他に,γδT細胞やinvariant natural killer T(iNKT)細胞,mucosal associated invariant T(MAIT)細胞などの自然リンパ球などがある.最近,Th17産生細胞を誘導する細菌として,マウスにおいてセグメント細菌(segmented filamentous bacteria,以下SFBと略記)が同定された34.一方,Bacteroides fragilisがその多糖類を介して制御性T細胞を誘導すること,Clostridiumにも制御性T細胞の誘導を起こす細菌が含まれることなども報告されている5)~7.このように,腸管には自己免疫の増悪に関与すると想定されるIL-17産生細胞と自己免疫を抑制する制御性細胞,さらに自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする自然リンパ球など多くの細胞が存在し,腸内細菌叢によって増殖や機能調節をうけている.

3. EAEを用いた研究

腸内細菌叢とMSとの関係を明らかにするために,まず行われた研究は,EAEを用いた研究である.古くは1990年代より,髄鞘を構成する蛋白質であるmyelin basic proteinに特異的なT細胞受容体をトランスジェニックした自然発症EAEモデルマウスにおいて,無菌環境下ではEAEが発症しないことが報告されていた8.抗菌薬の経口投与により腸内細菌叢を変動させた研究では,EAEの症状が軽減することが報告されており,腸内細菌叢がEAEの発症や症状の形成に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている910.無菌マウスを用いた研究により,腸管粘膜でのIL-17産生T細胞の減少やTreg細胞の増加,頸部リンパ節へのB細胞の移入の減少と自己抗体産生の低下によりEAE症状が軽減することが示されており,腸内細菌叢と中枢神経系自己免疫機序との関連が徐々にあきらかとなりつつある1112.特定の細菌との関連では,SFBが多数存在すると,EAEが悪化することが報告されている12.Bacteroides fragilisがその多糖類を介して免疫抑制作用,制御性T細胞の誘導などをおこしEAEを抑制すること5,また腸内細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸(short chain fatty acid,以下SCFAと略記)の投与により,制御性T細胞の誘導などをおこしEAEを抑制することなどが報告されている1314.また,MS患者由来の腸内細菌叢を無菌マウスに移入することにより,EAEの発症頻度の増加や症状の増悪,Treg細胞の減少が誘導されることが報告されており1516,MS患者で認められる腸内細菌叢の変動がMSの自己免疫病態に関与していることを示唆している.

4. MSと腸内細菌叢

近年,様々な自己免疫疾患や中枢神経疾患と腸内細菌叢との関連が報告されている.MSについても,本邦からの報告を含め,腸内細菌叢との関連を示す研究が多数報告されている.2015年に我々のグループは,20例のRRMS患者を対象とした研究により21種の腸内細菌が健常人40名と比較して有意に変動していることを報告した17.この報告では,Streptococcus thermophilus/salivariusおよびEggerthella lentaの2種がMS患者糞便中で増加しており,残りの19種のうち,14種がFaecalibacterium prausnitziiEubacterium rectaleなどの菌を含むClostridium clusters IVとXIVaに属していた.またこの中には,腸内細菌叢の主要な代謝産物であるSCFAを産生する菌が多数含まれることが明らかとなった.また残りの5種は,Bacteroides属,Prevotella属とSutterella属に属する菌であった17.同年に,北米より発表された研究において,MS患者7名,健常人8名の糞便中の細菌叢の解析により,MS患者ではFaecalibacterium属が減少していることが報告された18.さらにその後,北米より60例のRRMS患者を対象にした研究が発表された19.MS患者ではユーリ古細菌門(Euryarchaeota)のMethanobrevibacter属および,Verrucomicrobia門のAkkermansia属の増加が認められた.また,SCFAの1種であるbutyrateを産生する菌であるButyricimonas属がMS患者において減少していることが明らかとなった.その他,Collinsella属,Slackia属,Prevotella属が未治療のMS患者にて減少しており,Prevotella属とSutterella属が治療によって有意に上昇することも明らかとなった.また,同じく北米の31例のRRMSを対象とした研究により,健常群と比較してPseudomonas属,Mycoplana属,Pedobacter属,Blautia属,Dorea属の増加,Parabacteroides属,Adlercreutzia属,Collinsella属,Lactobacillus属,Prevotella属の減少が報告された20.2017年にはドイツからMSと健常人の一卵性双生児34組を対象とした研究が報告され,Akkermansia muciniphilaが健常な同胞と比較してMS患者で有意に増加していた15.また同年,北米のRRMS患者71例を対象とした研究においても,Akkermansia muciniphilaの増加が認められ,Acinetobacter calcoaceticusの増加と,Parabacteroides distasonisの減少が明らかとなった16.最近,我々はRRMS患者を62例まで増やした解析を報告した21Bifidobacterium属がRRMS群において,またStreptococcus属がRRMS群とSPMS群において健常群より増加していた.またRRMSにおいてMegamonas属が,SPMSにおいてRoseburia属の減少が認められた.種レベルでは,RRMS患者で,Akkermansia muciniphilaの増加が認められ,以前の報告と同様にStreptococcus thermophilus/salivariusの増加,Eubacterium rectaleMegamonas funiformisなどの菌種の減少を確認した.また腸内細菌のメタゲノム解析を行うと,SCFAの産生経路がMSでは低下しており,MS糞便中ではSCFAが減少していた.

これらの報告からMSにおいて共通して増加している菌としてAkkermansia muciniphilaが挙げられる.Akkermansia muciniphilaはヒト腸内細菌叢の中で多く存在する菌種(0.5~5%)であり,腸のバリア機能の修復と関連があることが報告されている13.また,免疫チェックポイント阻害薬の治療効果との関連が報告されているほか,試験管内や生体内でTh1細胞やTh17細胞を誘導することが知られている162324.しかし,最近,MS患者およびEAEを誘導したマウス糞便中にmiR-30dが増加しており,miR-30dをEAEマウスに経口投与により,Akkermansia muciniphilaの増加と制御性T細胞(Treg)の増加が誘導され,EAEの症状を抑制することが報告された25.このようにAkkermansia muciniphilaについてはその作用についてまだ不明な点もあるので,MS病態との関連については今後の研究が待たれる.我々を含む複数のグループから報告されているMSで減少している菌としてSCFAを産生する菌が挙げられる.SCFAは制御性T細胞を誘導してEAEを抑制することが知られている上,後述するように脱髄・再髄鞘化にも関与することから,MS病態との関連が示唆される131426.また,我々は二次進行型MSの解析も行い,SCFAとその産生菌の低下に加え,メタゲノム解析では,DNA mismatch repairに関するパスウェイが抽出された21.また,糞便中のシステインとその酸化型,グルタチオンとその酸化型の比率により酸化状態をみると,進行型では酸化型の比率が上昇していた21.進行型では,酸化ストレスが増加しており,そのためDNAダメージが起こりやすい環境になっていることが想定された.

5. 腸内細菌叢代謝産物とグリア細胞

腸内細菌叢は様々な代謝産物を産生し,それを通じて宿主に影響を与えている.その主要な代謝産物であるSCFAは6個以下の炭素鎖をもつ脂肪酸として定義され,代表的なものとしてacetate(酢酸),propionate(プロピオン酸),butyrate(酪酸)がある.SCFAは,腸管粘膜でのTreg細胞の分化を誘導することが示されて,免疫応答に影響があることが知られている.SCFAの中枢神経系への作用も知られており,無菌マウスにSCFA産生菌を移入することで血液脳関門(blood-brain barrier,以下BBBと略記)の透過性が変化すること,中枢神経系の組織常在性マクロファージであるミクログリアが無菌マウスでは未成熟な形質を示すが,SCFAの投与がそれをより成熟した形質へと変化させることなどが報告されている2728.前述のように,MS患者の腸内細菌叢では,SCFA産生菌の低下,糞便中のSCFA量の減少が報告されている.さらにMS患者にpropionateを経口投与したところ,Treg細胞の増加とTh1,Th17細胞の減少が認められ,長期投与により再発頻度が減少する可能性が示唆され29,MSの病態にSCFAの減少が関与している可能性が示唆されている.我々はSCFAのマウスへの投与により,EAEの症状が改善すること,症状の改善が制御性T細胞の増加と関連していることを見いだしたが13,脱髄,オリゴデンドロサイトにも直接作用する可能性を考え,免疫非介在性脱髄モデルであるCuprizone投与マウス可逆的脱髄モデルが腸内環境と関連があるか検討した.抗生剤投与により腸内細菌を変化させると,脱髄が悪化し再髄鞘化が遅延すること,またSCFAを投与することで脱髄が抑制されることから,腸内環境が免疫を介さずとも脱髄に関与することを見出した.さらに,免疫細胞の関与のない条件で作用を検討するために,マウス脳を薄切することで作成したorganotypic slice cultureを用い,SCFA,特にbutyrateが脱髄を抑制し,再髄鞘化を促進すること,さらにbutyrateは髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトの前駆細胞(oligodendrocyte progenitor cell,以下OPCと略記)の成熟を誘導し再髄鞘化を促進することが明らかにし,腸内細菌の代謝産物であるSCFAがOPCへの直接的な作用により髄鞘化を促進することを示した26.この結果からSCFAが免疫系のみならず,オリゴサイトにも直接影響を与えることによって,脱髄・再髄鞘化に関与し,MS病状を修飾する可能性が示された.

アストロサイトは中枢神経内で最も豊富に存在するグリア細胞であり,神経細胞へ栄養を供給し,細胞外イオン濃度の調節や,過剰な神経伝達物質の除去,BBBの構成など多彩な機能を持っている他,サイトカインの産生など炎症の形成にも関与する.近年,腸内細菌の代謝産物がアストロサイトに発現するaryl hydrocarbon receptor(AHR)を介して中枢神経系の炎症を抑制することが報告された30.I型インターフェロンはアストロサイトでのAHRの発現を誘導し,アストロサイト特異的にAHRの発現をノックアウトすることで炎症の増悪が認められた.腸内細菌はトリプトファンを代謝しAHRのリガンドを産生することが知られており,アンピシリンを投与することでAHRリガンドの産生抑制とEAEの悪化が誘導されたが,AHRリガンドの投与により改善したことが示された.また,ミクログリアのAHRがTGF-αの発現を誘導し,アストロサイトの活性化を抑制することも報告された31.以上のように,腸内細菌の代謝産物が,中枢神経系の細胞に直接的に影響を与え,その炎症病態を修飾するとする報告がされており,今後の治療法への応用が期待される.

おわりに

腸内細菌叢と免疫系,中枢神経系との関連について多くのことが明らかとなりつつあり,それに伴いEAE,MSの病態への理解も深まっている.本稿では主に腸内細菌とT細胞,グリア細胞との関連について述べたが,MSでは,近年海外ではB細胞除去療法の効果が報告されてB細胞についても関心が集まっている.MSの病態に液性免疫がどのように関与しているかについてはまだ不明な点が多いが,B細胞が抗原提示やサイトカイン産生などにより病態に関与する可能性も考えられている.MSの再発期に腸内細菌を認識するIgAを産生B細胞が脳脊髄液中で検出されることも報告され32,今後腸内細菌とB細胞との関連についても研究の進展が待たれる.腸内細菌叢とMS病態との関連が明らかになれば,病態の理解が進むとともに,治療への応用や,発症や再発の予防へつながる可能性もあり,今後の研究の進展が期待される.

Notes

※著者全員に本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業,組織,団体はいずれも有りません.

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