論文ID: cn-001258
症例は76歳男性.2017年4月から嚥下障害と微熱の精査目的で,当院外科へ入院した.左声帯麻痺と筋力低下を認め,5月に当科へ紹介された.神経診察で左顔面神経麻痺や嗄声,舌左偏倚,左難聴,軽度四肢筋力低下を認めた.CTで斜台の脱灰,MRIで斜台から上位頸椎までの軟部組織と硬膜の増強を認め,頭蓋底骨髄炎の所見であった.また多発性左脳梗塞,左内頸動脈狭窄を認めた.典型的耳症状を認めなかったが,左外耳道に大量の耳垢と炎症所見を認め,外耳道からの炎症波及を疑った.抗菌薬への反応に乏しく,4ヶ月の経過で死亡した.脳神経障害の存在は頭蓋底骨髄炎の予後予測因子であり,疑った際には早期の治療介入が必要である.