主催: 東北神経心理懇話会
会議名: 東北神経心理懇話会
回次: 32
開催地: 仙台
開催日: 2021/02/06 -
p. 3-14
右半球に損傷を持つ左半側空間無視患者の刺激図形の模写及び描画の縦断的変容過程について報告した。以下の事実が見出された。第一に、立方体透視図形の模写において、透視図形の各面が重ねられた二次元の模写から左側の面が省略された三次元の模写へ、さらに透視図形内部の奥行きの一部を表現する三次元の模写が出現し、患者の脳内における知覚表象の成長過程を顕在化しえたことである。第二に、花図形の右側半分の花弁と葉が描出する過程において、左側の葉が描出された段階が存在するが、この葉の半分しか描出されなかったことである。この事実は観察者中心座標系で半側空間無視を考えるよりは対象(物体)中心座標系で考えることの方が適切であることを示唆するが、描かれた葉が半分であったことの説明は対象(物体)中心座標系で考えても難しい。第三に、模写と比較して描画には思考活動の関与が大きく、描画は模写よりも自由度が高く、半側空間無視の評価には、模写の方が適切であることを示した。