抄録
原因帰属理論では,達成場面で失敗したとき,人はその人なりの合理性をもって帰属を行っていると考えてきた.しかし,こうした考えは正しいのだろうか。むしろ,人は本来,失敗を自動的に能力帰属しやすい傾向を持っており,能力以外の帰属因を考慮するのは難しいのではないだろうか。そこで本研究では,失敗時における能力帰属の自動性を示すことを目的とした。実験1では,失敗後に二重課題によって認知的負荷を課した高負荷条件と,認知的負荷を与えない統制条件を設け,能力帰属が行われる程度を比較した。その結果,高負荷条件は統制条件に比べて,能力帰属の程度が大きいことが明らかになり,能力帰属の自動性が示された。この結果は,他の解釈可能性を排除するために教示やフィードバック方法を変更した実験2でも再現された。