抄録
本研究では、Bayliss&Tipper(2006)の手続きを用いて、対象物への視線の予測性が人物判断に影響するか検討した。中心視野に正面顔の写真刺激が呈示されたあと左右いずれかの周辺視野に標的が出現した。参加者には標的の位置判断を課した。36枚の顔刺激には(1)必ず標的を見る(2)必ず標的の反対を見る(3)標的を見るか見ないかは50%ずつ、という3条件を設けた。課題終了後、顔刺激に対する好意度の判断をさせると、必ず標的の反対を見る顔に比べて必ず標的を見る顔に対して好意度が上昇した(実験1)。標的出現後に顔刺激の視線方向を変化させたところ(実験2)、こうした好意度の上昇は見られなかった。視線と対象との時空間的関係を処理することによって後の対人認知が影響されるが、好意度形成とって重要なのは、他者が共同注意を行うことよりも課題遂行に有用な情報を提供することであることが示唆された。