観察した顔について言語報告することが後の再認記憶に妨害的に働くことを言語隠蔽効果という。この言語隠蔽効果の生起メカニズムを説明する有力な考えに再符号化干渉説と転移不適切処理シフト説がある。前者の説では言語報告の不正確な再符号化が再認記憶を妨害すると考える(Meissner et al., 2001)。一方、後者の説では顔認知に利用されている全体的処理が言語報告によって部分処理に移行することが再認記憶を妨害すると考える(Schooler, 2002)。今回はこれら2つの説の妥当性について検討するために、言語報告の内容を正確性と全体・部分のどちらに関わる記述であるかの2つの側面から分析し、記述内容と再認記憶成績の関係を探った。その結果、部分に関わる不正確な記述の量が多いと再認成績が低下することや、全体に関わる不正確な記述の量が多いと逆に再認成績がよくなることが示され、部分的に両方の説とも支持された。