抄録
新奇な物体の触覚的物体認知時の脳活動を、NIRS (near-infrared spectroscopy)を用いて計測した。fMRIによる先行研究では、右手のみを用いて日常物体の再認を行った場合に、右頭頂葉が活動することが報告されている(Reed et al., 2005)。本研究では、この結果を、右手に加えて左手を用いた場合で、かつ、新奇な物体の認知を行う場合に拡張することを試みた。右頭頂葉のみが触覚による物体認知にかかわる脳部位であれば、これら条件下でも同様の右頭頂葉の活動が観察されるはずである。8名の健常成人の脳活動を、LEGOブロックで作った新奇な物体を触覚的に再認する条件と、再認をせずに単に手の上で動かす条件で比較した。その結果、用いた手にかかわらず再認条件で有意な両側の頭頂葉の活動が認められた。このことから、新奇物体の触覚による認知には両側の頭頂葉が関与することが示された。