心理臨床面接(以下カウンセリング)の中で臨床家がクライエントの話を聴く聴き方は一般的な聞き方と多くの点で異なることが,熟達した臨床家によって記述されてきた(例えば,氏原, 2002).しかし,臨床家が何をクライエントの話をどのように聴き理解しているかについて実証的に検証した研究はほとんどない.この点を検討するための予備的調査として,本研究では,臨床家が,第3者としてカウンセリング映像を視聴するとき,どのようにクライエントを理解するかについて検討した.カウンセリング映像視聴後の臨床家と非臨床家のそれぞれに,クライエントについて感じたことや考えたこと等を自由に述べさせ,そのプロトコル内容を,クライエント理解の方略の観点から分析することを試みる.また,結果と熟達した臨床家による記述との対応についても言及する.