抄録
学習時に書記の動作をすることが記憶成績に及ぼす影響について,動作の大きさと参加者間・内要因を操作して検討した。学習条件として,腕で身体の前方に大きく空書する空書大条件,人差し指で机に小さく空書する空書小条件,身体を動かさない空書なし条件の3条件を設けた。記銘材料は2桁数字のリストであった。実験1は,学習条件を参加者間要因とし,24名の参加者を対象に行った。その結果,学習条件間に有意な差は見られなかった。実験2は,学習条件を参加者内要因とし,21名の参加者を対象に行った。その結果,空書大条件が空書小条件,空書なし条件を上回り,空書小条件は空書なし条件を上回る傾向が見られた。これらの結果から,(1)書記の動作によって記憶成績が向上するには,学習条件が被験者内要因の場合(実験2)のように,“書く・書かない”が意識される必要があること,(2)書記の動作は大きい方がより効果をもたらすことが示唆される。