抄録
実際には提示されていない関連のあることがらを間違って想起するというフォルスメモリに関する現象は,DRMパラダイムを含めて多くの研究で示されてきた.一方,どのようにすればフォルスメモリを低減できるかといった側面の研究も進められている.それらの要因の中で,示差性(distinctiveness)は重要な要因であると考えられる.本研究は,運動行為は,内容としては意味的に関連していても,行為そのものが異なっていれば,示差性を高める要因として働くのではないか,という仮説を検証するために行った.「サンドイッチを作る」という一連の行為のビデオに関する記憶実験の結果,行為を単に観察していた場合よりも実際に行なった場合の方が,フォルスメモリが減少することが明らかとなった.このことは,行為を遂行することによる示差性の向上が,記憶成績を高める原因の一つであると考えられた.