本研究は高齢者に焦点をあてたフレーミング効果の特性に関する分析研究である。高齢者(65歳以上)と非高齢者(64歳以下)を比較するために,フレーミング効果評価の一連の頻度分析が行われた。フレーミング効果の評価にはWang(1996)の新しい定義が用いられた。非高齢者群においてはすべての課題でフレーミング効果が観察された。一方,高齢者群では全くフレーミング効果が観察されなかった。ポジティブ・フレームにおいてはリスクが最大の課題に例外が見られたが,利得の増加と共にリスク回避比率が増大する傾向を示した。また,ネガティブ・フレームにおいては高齢者群のリスク回避比率は非高齢者群に比べ全ての課題において有意に高かった。この結果を受けて,やさしいベイジアンによるアプローチとプロスペクト理論の修正適用に関しての考察が行われた。さらに,本研究が用いた事後的調査法に起因する探索的な研究特性の限界についても考察が試みられた。