高齢者は,情報家電機器の操作で様々な困難を示す場合がある。高齢者の認知特性の個人差は大きく,それぞれ異なった特性のもとでインタフェースを操作している。そのため困難さの原因を明らかにするためには,個人の認知特性を考慮する必要がある。そこで本研究では,情報化されGUIを備えたテレビである大型デジタルテレビを用いて,高齢者の認知特性の個人差によって生じる操作過程の差異を検討した。高齢者159名に対してAIST式認知的加齢検査を実施し,注意,作動記憶,遂行機能について1機能のみが低下している参加者,および,全機能に低下がない参加者を抽出した。これらの参加者群に対してユーザビリティテストを実施し,リモコン操作ログと発話ログを取得した。その結果,遂行機能低下群のみが,情報機器特有のGUIメニューボタンの操作に迷いやすく最適な操作系列を構築できないなど,各認知機能の低下群に特徴的な操作行動が明らかになった。