抄録
本研究では,大学生にとって身近な課題であるレポート作成を題材として,課題の遂行が当初のプランより遅延される計画錯誤と,個人特性としての時間選好率との関連性を検討することを目的に,質問紙法による調査を実施した.その結果,(1)時間選好率の高い群(将来よりも現時点での収入・消費を好む傾向の高い人たち)と低い群の間に,プランニング段階でのレポート着手予定日には有意な差異は認められないが,(2)実際のレポート着手日については時間選好率高群の方が遅い傾向にあり,(3)結果的に,高群の計画錯誤量が有意に大きいことが確認された.これらのことは,時間選好によって表現されうる,現在を重視し未来を軽視する個人特性が,プランニングされた行動の先延ばし傾向に影響を及ぼしている可能性を示唆する.