抄録
自動車の運転が得意な人と不得意な人の違いは何に起因するのか?本研究では、運転行動の基盤となりうる認知機能を測定する課題を開発し、それらの成績から特定の場面での個人の運転行動・傾向を推定することを目標とした。特に本発表では、身体座標と外部座標との対応づけ能力を調べる「左右反転ポインタ操作」課題の成績と運転行動の関連について報告する。被験者を座標対応づけ課題の成績(高/低)と運転頻度(多/少)に基づき4つの群に分け、直線後進、S字路後進、前進/後進車庫入れ等の実車運転行動を調べた。運転頻度が同じでも、課題成績高群は低群より、S字路後進、後進車庫入れ等において、完了時間、脱輪回数、正確さの指標で高い成績を示した。従って、課題で測定された身体―外部座標対応づけ能力は、運転行動と密接に関連し、たとえ運転頻度が高くても、その能力の違いが特定の状況での運転行動に反映されることがわかった。