異なる認知特性を持つドライバのシミュレータ環境における順応過程を検討した.8名の実験参加者について、EAEQ(日常注意経験質問紙)を用いて認知特性を高低群に区別した.同時に,FFPQ(主要5因子性格検査)とEPQ(失敗傾向質問紙)が用いられた.課題は先行車と自車との車間距離を,5m,または20mに保つことを行いながら,先行車両のブレーキランプ点灯を検出した場合にはブレーキを踏むことであった.結果,ブレーキ反応時間は車間距離を短く保つ条件の方が長く保つ条件よりも短くなった.また,車間距離は5mと20mのいずれでも過大であり,試行に伴う変容は見られなかった.このことは実験参加者が課題遂行のために内的に形成した評価基準は試行を通じて頑健に維持されており,ドライビングシミュレータ環境のようなヴァーチャル空間内での研究を行う際に留意する必要があることを示している.