社会的精緻化とは、記銘語に人物情報を付加することである。本研究は、偶発記憶に及ぼす人物情報の情動性と適合性の効果を検討した。実験参加者は大学生38名であり、各参加者は、記銘語と人物名が呈示され、その両者の適合性(記銘語から連想される人物として適合する程度)、及びその人物の快-不快の程度について評定し、その後、偶発自由再生テストを受けた。実験の結果、記銘語が人物名と適合しており、人物名から喚起される情動が快の場合が、記銘語が不適合であり、情動的に中立の人物名と結びついている場合よりも再生率が高かった。この結果は、人物情報が強い情動を喚起する場合にのみ、その情報によって精緻化された記銘語が認知構造に統合されることを示すものとして解釈された。