抄録
日常生活において、感じる時間の長さが人によって異なる例は少なくない。例えば、同じ映画を見ても、短く感じる人もいれば長く感じる人もいる。本研究では、こうした主観的な時間の長さにおける個人差の影響を調べた。実験協力者は、標的時間(2.5s)が経過したと感じた時点でキーを押す、時間作成課題を行った。その際、視覚または聴覚による妨害刺激を呈示した。その結果、妨害刺激を呈示した際の作成時間は、統制条件の作成時間よりも有意に短かった。さらに、視覚と聴覚のそれぞれの妨害刺激による作成時間の短縮の度合いに相関が見られた。この結果は、時間知覚を司る脳内ペースメーカーがモダリティ間で共通であることを示している。加えて、妨害刺激による短縮の度合いに性別による違いが見られた。この結果は、時間知覚における視聴覚情報の処理過程が男女で異なる可能性を示唆している。