抄録
【はじめに】音声言語情報処理における聴覚ラテラリティ研究においては右耳優位性を示す報告が多数ある.しかし,右耳優位性に個人差が生じる要因について言及されたものは見当たらない.よって本研究では,ワーキングメモリ容量に着目し,音声言語情報処理の際の聴覚ラテラリティとの関係について検討を行った.【方法】健常成人26名に対し,日本語版Reading Span Testと両耳異聴課題を実施した.両耳異聴課題では,片側の刺激音を復唱しながら反対側の刺激音の中に含まれるターゲット語に反応するよう被験者に求めた.また,左右の耳への刺激はクロスオーバーさせ,2つのパタンでの反応を記録した.【結果】ワーキングメモリ容量のLow Span群・High Span群共に右耳優位性を示した.さらに,High Span群でより強い右耳優位性を示した.【考察】右耳優位性とワーキングメモリ容量に関連性があることが示されたことから,音声言語情報処理機能のラテラリティの違いがワーキングメモリ容量へ影響を及ぼす可能性が示された.