抄録
自己顔をネガティブな方向に認知するバイアスは醜形症研究の中で報告されているが、健常者における顔認知バイアスは示されていない。本研究では、顔のパーツ位置をどの程度正確に配置することができるか、自己顔、友達顔、他人顔で調べた。写真を見ながら配置する統制群と比較した結果、顔の種類に関わらず、顔を再現する精度はかなり低いことが示された。さらに、理想顔に配置させる課題を行わせた結果、最初に配置した顔は理想顔に近い位置であることが分かった。健常者は、自己顔だけでなく他人顔においても、顔を理想方向にずらすバイアスをもっていると考えられる。醜形症患者では、自己顔だけをネガティブな方向にずらしてしまう顔認知バイアスが、様々な障害を引き起こしているのかも知れない。