抄録
幼児はコミュニケーションにおいて、物体に対して指差しを行って参照や注意の喚起を促す。このような行為は生後1年までに発達するが、その発達メカニズムは明らかになっていない。指差しは幼児の要求が記号化されたものだと考えられるが、その要求の発現としては届かない物体への到達運動が挙げられる。これまで、我々は、幼児が手のランダムな運動を視覚的に観察することのみで、手の運動の視覚-運動順逆変換およびその変換を用いたフィードバック制御が獲得されるモデルを提案した。本研究では、手の視覚的位置を、粗い選択性を持つニューロンによりコードすることで、提案モデルを用いて届かない目標への到達運動が発現するシミュレーションを行う。学習時には明示的に目標を設定していないにも関わらず、本モデルでは、届かない位置の視覚入力も到達目標となり途中まで到達運動を行う。これは、要求の発現であり、指差しの基礎となると思われる。