抄録
高齢者の情報機器の使いやすさに関与していると指摘(熊田・須藤・日比、2009)されている作動記憶、視覚的注意、プランニング機能の3機能を取り上げ、加齢に伴う認知機能の機能低下が情報機器の一つである券売機の操作パフォーマンスに及ぼす影響について検討した。高齢者の認知機能は、産総研式認知加齢検査(AIST-CAT)によって測定され、認知機能ごとに参加者は、機能低・高群に分けられ、各群の成績が2つの操作で比較された。その結果、視覚的注意機能とプランニング機能の低下は、両操作において操作時間の遅延、操作エラーを増加させた。しかし、作動記憶機能の低下は、両操作に対して影響を与えなかった。以上の結果から、認知機能低下の影響は、操作内容の単位で影響が異なることが示唆された。すなわち、高齢者の情報機器の操作上の問題は、単純な加齢による影響ではなく、加齢に伴う認知機能の低下が原因であると示唆される。