抄録
笹岡ら(2009)は時計を刺激とした心的回転課題中の脳活動を計測し,心的回転中に左頭頂葉および左運動前野などが活動し,右頭頂後頭領域が回転角度に依存して活動することを示した.本発表では,心的回転中の脳内ネットワークの時空間特性をより詳細に明らかにするため,笹岡ら(2009)のデータを用いてfMRIと脳波の統合化解析を行った.その結果,心的回転中にβ帯域(14.7Hz)の脳波パワーと心的回転の回転量に有意な負の相関が見られた.さらに,最も強い相関が見られた電極における14.7Hzの脳波パワーとBOLD信号が相関を示す脳部位を調べた結果,右前・後部頭頂間溝,左下頭頂小葉および左運動前野において有意な負の相関が見られた.この結果は,心的回転中にこれらの領域がβ波の発生タイミングで動的な皮質ネットワークを形成していることを示唆している.