抄録
単一物体を視点不変に認識し,神経生理学的および心理学的にも妥当な神経回路モデルとして,一般化動径基底関数ネットワーク(GRBFN)が提案されている.本研究ではGRBFNを拡張し,複数の物体形状の脳内表現を学習する神経回路モデルを提案する.本モデルでは複数個のGRBFNを2次元格子上に配置し,異なる視点からの物体の特徴点の画像座標を入力として,各GRBFNが視点不変に一定値を出力するよう教師あり学習を行う.この際,教師信号との誤差が最も小さいGRBFNからの格子上の距離に比例して各GRBFNの学習率を減少させる.この競合学習により,3次元構造の異なるペーパークリップ状の物体に対して,各GRBFNの近傍に形状の類似した物体の表現が自己組織化されることを確認した.これは下側頭葉における複数物体の表現に類似しており,その表現形成に本モデルの競合学習のメカニズムが関与している可能性を示唆している.