抄録
本研究では,スキーマとターゲット刺激の言語化が再認記憶と想起意識に及ぼす影響を検討した。実験参加者は,台所のスキーマに一致する典型的ターゲット刺激と一致しない非典型的ターゲット刺激を含む台所の動画を見た。動画の提示後,半数の実験協力者は動画に含まれていたターゲット刺激を言語化した。残りの半数は言語化しなかった。そして,ターゲット刺激と典型的妨害刺激と非典型的妨害刺激から構成される再認課題が行われ,remember-know判断も求められた。その結果,典型的ターゲット刺激よりも非典型的ターゲット刺激に対してremember判断を伴うヒットが確認された。非典型的妨害刺激よりも典型的妨害刺激に対してremember判断とknow判断を伴う虚再認が確認された。ターゲット刺激の言語化により,ミスが生じるようになった。言語化されなかったターゲット刺激が再認されなかったことが原因と考えられる。