抄録
航空機操縦者は、情報化に伴い増大する計器上の情報を有効活用し、状況認識を保つことが安全運行上求められている。同時に、航空機操縦は、機体のコントロールなど複数の作業を同時に行うマルチタスク状況にあり、情報の活用を困難にしている。情報の有効活用とマルチタスク能力との関連を明らかにするため、本研究では操縦作業を単純化した、トラッキング課題及び空間的ワーキングメモリ課題の二重課題検査を作成した。操縦者及び非操縦者を対象とし、単独課題時及び二重課題時のデータを収集した。また、操縦者の上司による技量評価(状況認識等)を得た。その結果、単独課題時よりも二重課題時に、操縦者の成績は、非操縦者よりも優れていた。操縦者の二重課題成績は、単独課題時のトラッキング成績との関連を示した。単独課題時のトラッキング誤差には、航空機の操舵に関する技量評価との関連がみられ、機体をコントロールする技量の重要性が示唆された。