抄録
日本人、中国人、台湾人、韓国人を対象に漢字を視覚刺激としたときの反応を脳磁図で検証した。刺激として、漢字1(平均画数8)、漢字2(平均画数13)、簡体字、繁体字(平均画数13)及びハングル文字の5種類が使用された。文字の複雑な分析の指標とされている刺激提示約150-200秒の反応M170を分析対象とした。M170の面積を求め、被験者内、被験者間で比較を行った。M170の反応はすべてのグループで画数に比例して大きくなるわけではなく、個人差が非常に大きかった。中国語の学習歴があり台湾在住経験がある日本人被験者は漢字2と繁体字の反応が他より大きかった。母語での漢字使用よりも個人の言語使用環境が漢字認知に影響を与えていると思われる。また刺激後提示200ミリ秒内というごく早い時期に無意識に漢字に対して何らかの判断がなされている可能性も示された。