記憶内の一部の情報を検索することは,それ以外の関連情報の検索可能性を低下させることがある。この現象は検索誘導性忘却と呼ばれ,検索時に競合する記憶が抑制されたことによるものと考えられている。本研究では,高自閉性傾向者(日本語版自閉症スペクトラム指数にて測定)が検索誘導性忘却を示すかどうかを検討した。実験参加者はカテゴリと事例のペアを学習した後,一部の学習ペアについて手がかり再生を行った。最後に,カテゴリ+語幹手がかりを用いて全ての学習ペアの再生を行った。その結果,自閉性傾向が低い群では検索誘導性忘却が見られたのに対し,高い群ではみられなかった。このことから,高自閉性傾向者は競合する記憶を抑制できない可能性が示唆される。