本研究では,線画オブジェクトを用いて統計的な規則性の学習において意味情報の柔軟性が見られるか検討した。学習フェイズでは線画オブジェクトが1つずつ呈示され,刺激列は3つのオブジェクトが常に同じ系列順序で呈示されるトリプレットによって構成されていた(例えば,りんご,椅子,犬)。テストフェイズでは,学習フェイズで呈示された線画オブジェクトと同じカテゴリーからなる別のオブジェクトで構成させるトリプレット(オレンジ,テーブル,猫),および学習フェイズでは順序としては呈示されなかったフォイルが呈示された。実験参加者は,学習フェイズを参考にして2択によるfamiliarity判断を行った。実験の結果,学習段階で呈示された順序のトリプレットを選択する割合はチャンスレベルであった。視覚的統計学習において意味情報の柔軟性は見られず,順序情報と事例レベルの意味情報が連合して学習されている可能性が示唆された。