抄録
本研究では作動記憶容量の個人差が感情制御に及ぼす影響を検討した。作動記憶容量の個人差は認知的活動のみならず、様々な社会的活動や感情的現象に影響することが示されつつある。感情的現象の中でも、感情プライミング効果は精神疾患のネガティブ感情持続の基礎メカニズムとして考えられており、感情制御を反映しているといわれる。本研究ではこの感情プライミングに着目し、作動記憶容量個人差との関係を検討した。作動記憶容量個人差の測定にはディジット・スパン・テストを用い、感情的過程の測定には感情誤帰属手続きという感情プライミング課題を用いた。結果として、作動記憶容量の低い人は感情プライミング効果が顕著に認められたのに対し、容量の高い人は感情プライミング効果が低減していた。このことから作動記憶の感情制御効果が示唆される。