視線手がかり課題において、視線方向がターゲット位置を予測する顔は、そうでない顔に対してより信頼できると判断される。本実験では、視線手がかり課題における顔刺激の呈示回数を操作し、顔に対する潜在的な選好がどのように形成されるのか、そのタイムコースを検討した。その結果、視線手がかり効果は1回のみ呈示された顔に対しては生じなかったが、2回以上の呈示では効果が認められ、その効果量は呈示回数に関わらず一定であった。一方、信頼性の判断は、1回のみに呈示された顔に対しては視線が有効な手がかりとなっている顔が無効手がかり顔よりも信頼できると判断されたが、この傾向は呈示回数が増えるにつれて減少した。また、被験者は顔と手がかりの有効性の関係を意識的に再認することは出来なかった。これらの結果は、視線手がかり課題における顔に対する印象の変化は潜在的であり、視線による注意誘導とは独立に生起していることを示唆している。