抄録
本研究では,デジャヴ体験が眼前の光景と典型的光景表象との類似により生起するというKusumi (1998)のモデルをもとに,Googleストリートビューで呈示した光景の典型性がそれに対するデジャヴ体験の生起率に与える影響を検討した。先行研究(関口・北村,2010)では,デジャヴの生起を1)未経験の自覚にも関わらず,2)ある光景を「見たことがある」と感じ,3)その根拠が不明確で,4)何らかのデジャヴ関連感情を感じている場合と定義し,典型性の高低によるデジャヴ生起率の違いを調べた。これに対し本研究では,より厳密な評価のため,更に5)参加者自身のデジャヴ報告を加え,全ての基準が満たされた場合にデジャヴが生起したと見なした。その結果,先行研究と同様,典型性の高い光景の方が低い光景に比べ,より頻繁にデジャヴを生起させることが示され,デジャヴ体験の生起に光景の典型性が影響することが明らかとなった。