抄録
日本語独特のリズムである五七調が暗唱にどのような影響を与えるのかを大学生を用い検討した。10文からなる材料を聴覚提示する時に五七調で提示する五七調条件とそうでない非五七調条件を比較し,3回の口頭再生を課した。その結果,五七調条件のみに1回目から2,3回めの再生時に記憶高進現象が認められた。一方,非五七調条件では,2回目から3回目のみ記憶高進現象の傾向が認められた。記憶高進現象は記憶材料をチャンク化することより生じるため,この結果は五七調のリズムは参加者のチャンク化を促進する,つまり,暗唱しやすい材料といえる。一方,非五七調の条件でも,2回目3回目と再生を繰り返すにしたがって,実験参加者は自ら五七調に材料を切って暗唱を行っていた。そのため,記憶高進の傾向が認められたと考えられる。よって,日本語のリズムである五七調の材料の使用が暗唱を促進すると考えられる。