抄録
本研究では,健常者を対象とした自閉症スペクトラム指数(AQ)において,空間的形状の複雑さが視覚的短期記憶(VSTM)容量に及ぼす影響の違いについて検討した。空間的形状は,同等集合サイズ(ESS)により,単純(ESS4)と複雑(ESS8)として定義された。予備調査におけるAQ得点(n=120)より,High AQ(n=11)とLow AQ(n=9)を抽出し変化検出課題を行なった。変化検出課題では,様々な傾きをもった線分が,300,500,900msの提示時間により反復提示された。結果から,提示時間が長い条件(900ms)において,Low AQではESS4の方がESS8よりもVSTM容量が大きかったが,High AQではESS4とESS8の間に有意差は認められなかった。以上より,Low AQで認められるVSTMに対する空間的形状の複雑さの影響が,High AQでは認められないことが分かった。