抄録
発達障害児の中には,字を読む力に乏しい者が多いことが知られている。通常学級においても読みの基本的な過程に困難を抱える児童が存在することから,授業場面を対象に,彼らの授業理解の様相を調べる必要がある。そこで,本研究では,公立小学校2校の3年生・4年生(計4学級)を対象に,読み困難児とそれ以外の児童の授業理解を比較することを試みた。具体的には,国語の説明文単元において,通読(1,2時間目)と精読(2~5時間目)が終わった段階で,文章内容を再生させるふり返りシートを実施し,その記述内容を分析した。児童の記述を,段落の要旨を表す重要情報と,具体例などそれ以外の情報を表す非重要情報にコード化した結果,学年平均では通読後から精読後にかけて重要情報が増大していた。ところが,大半の読み困難児においてはそうした増加が見られず,基本的な読み過程のつまずきが,高次的な理解をも阻害している可能性が示唆された。