抄録
環境イベントに対応した適切な運動を生成するうえで視覚運動協応は重要である。視覚運動協応のメカニズムを検討する代表的な課題に、運動するターゲットをトラッキングする課題がある。しかしながら、これまで研究で、トラッキングの運動生成に参照点検出が与える影響について実験的に検討した例は少ない。本研究では、日常的な視覚運動協応場面を、環境参照点検出要求条件、自己参照点検出要求条件、環境参照点・自己参照点同時検出要求条件の3つに分類し、それぞれの条件で運動が生成されるメカニズムには違いがあると仮説をたてた。トラッキング課題を用いた実験の結果、環境イベントの変化には、自己参照点検出に比べ、環境参照点検出のほうが適応的な運動生成が可能である可能性が示された。また、より認知的負荷が大きいことが予測される環境参照点・自己参照点同時検出で、各非同時参照点検出と運動パフォーマンスが変わらないことが示された。そのため、日常的な視覚運動協応場面において、同じような運動が生成されたとしても、そのメカニズムには検出される参照点の条件で違いがあると考えられる。