抄録
誘導効果とは,片方の眼に呈示する画像を垂直方向に拡大し両眼融合を行うとき,垂直軸まわりの刺激の傾きが知覚される現象である。これは視覚系が垂直像差を処理していることを示唆しているが,そのメカニズムは明らかではない。本研究では,補正値が網膜位置によって変化してもよいという仮定を持つ対応補正モデルを作り,Kaneko & Howard(1996)の実験結果を説明できるかを,計算機によるシミュレーションによって検討した。シミュレーション結果は,Kaneko & Howard(1996)の心理物理学実験の結果と一致した。したがって,垂直像差は両眼対応を補正するために利用されている可能性が示唆される。