目的地への道を往復する際、帰路を短く感じる現象を「return trip effect」という。本研究ではこの現象を心理学的・生理学的に検討した。実験は歩行映像を2本見せ、それが往復になっている往復群(10名)と、往復ではない対照群(10名)の2群だった。課題はRP3課題と11件法を行った。心電図から平均心拍数とCVI(副交感神経指標)を算出した。RP3は群間で差がなく、11件法では往復群でのみ1本目を長く評価していた。後から評価する11件法で往復群においてのみこの現象が見られたことから、return trip effectのポストディクティブな側面が示唆される。平均心拍数とCVIは群間に差がなかったが、CVIの差分と11件法において有意な相関が対照群においてのみ見られた。時間知覚には副交感神経が関係するが、return trip effectではより認知的な負荷が働くことが示唆される。