抄録
加齢に伴い,さまざまな認知機能が低下・変化することが示されているが,認知的加齢変化と人工物の相互作用に関して十分な検討がなされていない(赤津・原田・三樹・小松原,2011).そこで本研究では「高齢者が人工物利用に対して抱く不安感」が利用学習に及ぼす影響について検討することを目的とした.情報機器に対する不安態度が強い高齢者,不安態度が弱い高齢者を抽出し,実際に情報機器(オフィス向け複合機)を利用している様子を若年者と比較するという認知的ユーザビリティテストを行った.結果,課題成績について加齢の影響がみられた.また,繰り返し同じ操作を行う課題において,高齢者不安低群は操作を繰り返すことで成績が向上するものの,高齢者不安高群はある一定のところで学習が伸び悩むことが明らかとなった.また,課題成績といくつかの認知課題との相関を見たところ,高齢者不安高群において高い相関関係がみられた.