抄録
感情は身体空間と連合しており,快感情は上方向へ,不快感情は下方向へのバイアスを身体動作に与えるというような感情による身体感覚の変容が生じる。本研究では,このような身体感覚の変容が,無意識に処理された感情情報でも起こるのかを検討した。感情刺激を意識から除去するために,本研究では連続フラッシュ抑制を利用した。参加者は,感情を喚起する画像刺激 (快,不快,中性) を2500 ms観察した後,画面上のドットをジョイスティックにより任意の位置に移動させることを求められた。刺激呈示条件はマスク有条件とマスク無条件の二種類であった。実験の結果,マスク無条件において,快画像観察後の方が,不快画像観察後に比べて,ドットの平均位置は有意に高かった。一方,マスク有条件ではこのような効果は消失した。これら結果は,身体空間と感情の概念的連合の賦活には,意識的にアクセス可能な感情情報が必要であることを示唆する。