抄録
本研究では,規則性のある刺激列を構成する刺激,及び規則性のある刺激列に挿入された刺激の記憶成績について検討した。参加者は,学習フェイズにおいて3つのオブジェクトが一定の順序で呈示されるトリプレット刺激列,ランダムに呈示されるランダム刺激列からなる刺激列を観察した。その後,学習フェイズで呈示された刺激に対する再認課題を行った結果,ランダム刺激列よりもトリプレット刺激列を構成する刺激に対する記憶成績が高くなることが示された(実験1)。実験2では,学習フェイズの最後においてトリプレットおよびランダム刺激列の間に文字刺激が挿入され,文字に対する再認課題を求めた。その結果,ランダム刺激列よりも,トリプレット刺激列に挿入された文字に対する記憶成績が低いことが示された。したがって,規則性のある刺激に対する記憶処理は促進されるが,規則性を壊す刺激に対する処理は潜在的に抑制される可能性が示唆された。