他者の内面にある意図を推定するためには,周囲の環境や相手の行動特性を考慮した状態での他者の行動観察が必要である.本研究では,相手の行動特性の知識を与える前後で意図推定結果に違いがあるかを調べた.実験刺激として迷路を用い,行動特性の知識なし(自己判断),行動特性学習後(学習①,②)の3条件で,agentの経路を見て,agentが目指すゴールについて評価させた.予想される行動選択確率を期待値として協力者のデータと期待値を比較したところ,角度変化小の経路の自己判断条件で差が見られた.自己判断条件では向かった先のゴールへ行く確率を高く見積もっていることから,agentの視野を考慮できず自己視点の情報を多く用いるが,行動特性獲得後はagentの視野を考慮した推定が可能になると考えられる.よって本研究で用いた迷路課題は健常成人でも誤答する可能性の高い心の理論課題である可能性が示された.