われわれは家族,友人,仕事上の交友など,多くの人間から構成される社会的関係を維持することで日常生活を送っている.そのためには,それぞれの人が互いをどのように考えているか,ということを階層的に関係づけて理解する能力,すなわち階層的な心の理論(theory of mind: ToM)が重要である.この階層的な心の理論を検討するための方法として,本研究では戦略的ボタン選択課題を考案した.反応時間を計測して低次ToM条件と高次ToM条件の比較を行い,高次ToMの方が反応に時間を要することを明らかにした.またToMの検査として広く使用されている誤信念課題のデータと比較した結果,低次ToM条件および高次ToM条件で誤信念課題と反応時間の相関がみられ,本課題がToM機能を評価するための課題として妥当であることが示唆された.