抄録
伊藤(2012,認知心;2013,認知心)に引き続き,アイテム法による指示忘却パラダイムを用いて,顔刺激において指示忘却が認められるのか,顔刺激の情動価によって指示忘却効果に違いは認められるのかを検討した。実験参加者は,32人の人物の怒り顔または真顔からなる刺激リストを学習した。リストの半数は顔刺激提示後に「忘れろ」と忘却手がかりが,残り半数は顔刺激提示後に「憶えろ」と記銘手がかりが提示された。リスト学習後,全ての顔刺激に対する再認テストが行われた。再認テスト時の顔刺激はすべて怒り顔であった(異画像再認課題)。その結果,喜び顔・真顔ともにおいて,忘却手がかりが提示された刺激は記銘手がかりが提示された刺激よりも記憶成績が低くなるという指示忘却効果が認められた。