抄録
ノスタルジアはその喚起の手法によって個人的ノスタルジアと社会的ノスタルジアの2種類に分けられる。近年,個人的ノスタルジアについては心理的健康を保つ役割が明らかになるなど,心理学の研究対象として多く取り上げられてきた。だがその一方で,社会的ノスタルジアについては心理学的に実証的な研究がほとんどなされていない状況である。本研究ではこの2種類のノスタルジアについて,喚起後の向社会的行動への影響の測定を通して比較検討することを目的とした。そのため,まず社会的ノスタルジア喚起の刺激を作成し,その後個人的ノスタルジア条件・社会的ノスタルジア条件・統制条件を設定して,喚起による向社会的行動への影響を調査した。その結果,援助行動への影響に差は見られなかったが,2つのノスタルジア間で罰行動において違いが見られた。