抄録
本研究は,運転支援や機能訓練に役立てる知見を得るために,高齢ドライバの人間特性を多角的に把握することを目的とした.本報告は,そのうち運転適性検査を用いて高齢ドライバの刺激-反応特性を検討した.50代15名,60代40名,70歳以上45名が参加し,全員にインフォームド・コンセントを行った後,認知機能検査や高齢者講習と同種の運転適性検査器を用いて7つの検査を実施した.7つ中4つの検査の反応時間と正答率を用いた分析から,60代以上は刺激数が増加すると反応は遅延し,足反応と刺激数増加が同時に生じる場合には年齢差が顕著になることが示唆された.また,青色に対するパフォーマンス低下が60代以上の反応時間と正答率でみられ,赤色に対しては反応が速くなるという色の効果が示された.以上の結果から,運転適性検査により高齢ドライバの刺激-反応特性が得られ,運転時のパフォーマンス低下につながる要因が示唆された.