抄録
近年,初等中等教育の美術教育では鑑賞が重視されてきており,鑑賞の授業を充実させるための一つの手立てとして,教室で使用する作品提示メディアの充実が求められている。そこで作品提示メディアに関する課題を整理した上で,(1)作品提示メディアの情報化と利用の実態,(2)教員がとらえている作品提示メディアが授業に与える影響,(3)教員が作品提示メディアに求めている機能,これら3点を明らかにすることを目的に,全国の中学校の美術科教員を対象に質問紙調査を実施した。その結果,美術室は普通教室に比べICT活用の学習環境が整っていない傾向が見られた。また,鑑賞する作品を選択する際に作品提示メディアの影響を受けている教員が少なくないことが示唆された。さらに,美術科教員は,「実物に近い大きさで提示する」「立体を様々な方向から鑑賞できるようにする」といった機能を作品提示メディアに求めており,より良い鑑賞学習を行うためにはこうした機能を作品提示メディアに持たせたるといった改善を図る必要があることが分かった。