本研究で我々は,二重まぶたの線に目を大きく見せる作用があるかを検討した。つまり,目の客観的な大きさ(眼裂内の面積)が同じである時に,線がついているだけで目が大きく見えるかどうかを調べた。眼裂の線と二重まぶたの線とがデルブーフ錯視のように知覚的同化を起こすなら,二重まぶたの線があるだけで目が大きく知覚されるはずである。
実験の結果、客観的な目の大きさが同じで場合でも,まぶたに線が有るだけで目が大きく知覚されることを示した。顔全体としての処理を抑制した条件(倒立提示)でもこの錯視効果が得られたため,その基本原理は顔知覚に特有ではなく,デルブーフ錯視のような幾何学錯視と共通であると推察される。しかしながら,正立顔では,倒立顔に比べ,二重幅の個人差が強く表れた。これは,正立顔では二重の錯視効果も顔の他のパーツとの相互関係の中で統合的に処理されていることを示唆している。