抄録
心的回転課題の成績は女性で男性よりも低いことが知られる。一方,刺激上部に頭をつけて身体への見立て(身体化認知,embodied cognition)を可能にすると,全体処理が促進され成績が向上することも知られる。本研究の目的は,身体化認知によるイメージ操作の促進に男女差があるかどうかを明らかにすることであった。刺激は配列されたキューブであり,上部に顔があるないものとないもの,またキューブの全体形状が身体模倣可能なものと不可能なものがあった。課題は提示される2つの図形が同じかどうかの判断だった。結果,顔があるときと身体模倣が可能なときに遂行成績が向上したことから,男女ともに身体化認知の効果が確認された。特に女性は局所情報を目印として使いにくい奥行回転条件において顔による促進効果が高かったことから,心的回転課題の遂行において身体化認知は女性でより有効であることが示唆された。