抄録
本稿では,地図学習における認知距離と視空間ワーキングメモリの関係を調べた。過去に行われた大藤(大藤, 2014a,2014b)の研究では,視覚ワーキングメモリ容量の小さい者は,距離推定を行う線分を区切る点の数が多いほど距離が長く推定されること,空間ワーキングメモリ容量では同様の傾向が見られないことが報告されている。この結果は,視覚ワーキングメモリの働きが低い場合,点の数を頼りながら距離推定が行われたことを示している。本稿では,さらに視空間ワーキングメモリの容量や点の数が,正答距離との誤差の大きさ,すなわち絶対誤差にも影響を及ぼしているかどうかを調べた。その結果,どちらの要因も絶対誤差を変化させず,影響は見られなかった。この結果について,数の情報を頼ることによる絶対誤差の抑制,および課題の難易度の観点から考察された。